日本で部屋を探すとき、本当に難しいのは物件が見つからないことではありません。タブを十数枚開いても、「自分に本当に合うのはどれか」「周辺相場より高いのか」「入居前にいくら必要か」「通勤、広さ、築年数、ペット、駅距離をどう比較するか」が判断しにくいことです。
Japan Rental Analyzer は、その段階を支援するために作りました。SUUMO、LIFULL HOME’S、athome、Yahoo!不動産の代わりになるサービスでも、全物件を集めるポータルでもありません。自分が検討している物件詳細ページを貼り付けると、散らばった情報を比較・追跡できる一枚のレポートに整理します。
ソースコード:github.com/panda-pig/Japan-Rental-Analyzer

長い入力フォームではなく、一つのURLから始める
現在は、次の四つの物件詳細ページに対応しています。
- SUUMO
- LIFULL HOME’S
- athome
- Yahoo!不動産
URLを貼ると、賃料、管理費、敷金、礼金、面積、間取り、階数、築年数、駅徒歩、主な設備を抽出します。物件の閲覧、問い合わせ、申込みは掲載元で行い、Japan Rental Analyzer は発見から行動までの間にある分析へ集中します。
普段の探し方を変える必要がない点が実用的です。慣れたポータルで検索し、本当に気になる候補だけを分析器へ送り、表計算へ項目を転記する手間を減らします。
8次元で「自分に合う」を説明できる形にする
同じ部屋でも、人によって評価は変わります。通勤時間より広さを優先する人もいれば、ペット可や低い初期費用が必須の人もいます。そのため、単純な賃料順ではなく、個人条件に基づく8項目を評価します。
- 予算
- 面積
- 通勤
- 階数
- ペット条件
- 駅距離
- 築年数
- 初期費用
各項目を正規化し、設定したウェイトで0〜100点へまとめます。オプションの通勤時間サービスが未設定なら、欠損を理由に減点せず、その項目を有効ウェイトから外します。
スコアは「客観的な一位」を決めるためのものではありません。レーダーチャートで強みと妥協点を見えるようにし、ウェイトによってポータルの既定順ではなく、自分の生活に近い判断軸を作るためのものです。
月額だけでなく、相場と入居時の負担を見る
物件ページでは賃料が最も目立ちますが、判断には少なくとも二つの追加情報が必要です。
一つ目は、エリア相場との差です。レポートは月額と周辺の平均賃料を並べ、金額差と割合を表示します。間取り、築年数、細かな立地の比較を省略できるわけではありませんが、割高な候補や、詳しく調べる価値のある候補を早く見つけられます。
二つ目は、契約前に必要な現金です。敷金、礼金、仲介手数料、前家賃、その他の一般的な費用を概算し、内訳をグラフで表示します。来日直後、引っ越し予算が限られる場合、家具や保証会社の費用も同時に必要な場合は、月額数千円の差より重要になることがあります。
同じURLを再取得すると価格履歴も残ります。「前より安くなった気がする」という記憶を、実際の推移で確認できます。
公的データと住民の実感を同じレポートへ
掲載ページが主に部屋を説明する一方、暮らしやすさはエリアと駅にも左右されます。レポートには次の背景情報を追加します。
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」の中古マンション㎡単価中央値と取引件数
- 洪水浸水深と土砂災害警戒区域数による地域リスクの参考値
- LIFULL HOME’S「まちむすび」の交通、治安、買い物、子育て、自然に関する住民評価
これらは表示専用で、物件総合スコアには混ぜません。公的データの権威性が個人の優先順位を上書きしないようにし、「個人条件の評価」と「外部の参考情報」を明確に分けています。
現在の災害指標は区役所周辺から算出した地域レベルの参考値であり、特定建物のリスク判定ではありません。最終判断では、公式ハザードマップ、重要事項説明を確認し、仲介会社や管理会社にも確認する必要があります。
物件プールは、開いたタブより候補を覚えてくれる

分析した物件は自動的に物件プールへ入ります。スコアなどで並べ替え、月額、面積、相場偏差、お気に入り状態を同じ表で確認できます。行を選ぶと、その物件のレポートへ切り替わります。
面積と月額のコストパフォーマンス散布図、間取り分布、物件特徴のワードクラウドもあります。一件ずつ見ていると気づきにくい傾向が、候補が増えるほど明確になります。特定エリアが予算を押し上げている、保存した物件は面積が小さい、同じ設備が何度も現れる、といった特徴です。
2〜4件を同じ基準で横断比較する

物件プールから2〜4件を選び、専用の比較画面へ進めます。重ねた8次元レーダーで各候補の取捨選択を見せ、下の表で総合点、賃料、管理費、初期費用、面積、㎡単価などを同じ位置に揃えます。
複数のポータルタブを移動するより、表示位置と計算基準が統一されているため比較しやすくなります。お気に入り登録に加え、「気になる」「内見」「申込」などの検討状態も管理でき、分析を次の行動までつなげられます。
候補がない段階では、エリアから絞り込む

まだ具体的な候補がない場合は、エリアデータから検索範囲を縮められます。現在は東京23区、横浜市・川崎市の各区、いくつかの主要都市を含む56地域の記録を持ち、次を表示します。
- 平均賃料とエリアランキング
- 相場 × 総合評価の「狙い目エリア」マップ
- 複数エリアのレーダー比較
- 並べ替え可能な全地域テーブル
有名な駅名から理由なく範囲を広げるのではなく、「予算内で交通と環境のバランスがよい地域はどこか」という、より良い検索条件を作るために使えます。
実用性は、意思決定の流れがつながることにある
このプロジェクトの価値は、どれか一つのグラフではありません。別々だった行動を一つの流れにしたことです。
- 普段のポータルで物件を見つける
- URLを貼り、個人条件レポートを作る
- 相場、初期費用、公的データ、住民評価を確認する
- 候補を物件プールに残す
- 2〜4件を同じ基準で比較する
- お気に入り、内見、申込などの状態を管理する
技術構成は Python、Flask、SQLite、Jinja2、Vanilla JavaScript、ECharts です。物件情報はユーザーがURLを明示的に貼ったときだけ単発取得します。robots.txt を確認し、リクエスト間隔を設け、CAPTCHAを迂回せず、口コミ本文や個人情報も保存しません。
向いている人と、代替しないもの
Japan Rental Analyzer は、日本の賃貸ポータルですでに候補を集め、統一した基準で整理・比較したい人に特に向いています。探し始めた段階でも、エリア分析を構造的な入口として利用できます。
ただし、あくまで意思決定支援ツールです。スコアは個人設定に依存し、初期費用は概算、相場は地域統計、災害情報は建物調査ではありません。最終判断では掲載元、契約条件、公式災害情報を確認し、内見で採光、騒音、周辺環境、実際の駅徒歩を確かめる必要があります。
すべての不確実性を消すのではなく、タブ、メモ、記憶に散らばっていた情報を、「なぜこの物件が自分に合うのか」を説明できる比較材料へ変える。それが Japan Rental Analyzer の役割です。
この記事を楽しんでいただけましたか?
役に立った場合は、私の活動を支援することをご検討ください。